はじめに
「若者のスポーツ」と思われがちなスキューバダイビングですが、欧米ではシニアが主役。
ハワイやカリブ海など、欧米人が多く訪れるスポットではのんびり夫婦で、あるいは家族でダイビングを楽しんでいる姿を多く見かけます。
自分のペースを維持し、体力レベルに合わせて楽しめるのがダイビングです。
プロを目指すのであれば、勿論体力的にも技術的にも高度なものを要求されますが、自分の趣味で楽しむ場合は普通の日常生活ができれば何の問題もありません。
むしろ、最近では身障者の方々でも気軽に楽しめるように教育プログラムや手順などが完備されているくらいです。
「誰よりも優れた面」を競うスポーツではないダイビングは、「誰よりもマイペースに」楽しむ事が出来ます。
しかし、問題はダイビングといえどもやはり相手が存在するもの。
マイペースを維持するために自分はどうあるべきか?
また、まだ未知の世界でもあるダイビングでの健康管理(自己管理)はどうあるべきか?
を一緒に考えてみましょう。
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ダイビングは危険なスポーツ?
陸上スポーツやマリンスポーツにおけるケガの発生率(PADI レスキューマニュアルより抜粋) | |
スポーツ | 事故発生率 |
アメリカン・フットボール | 2.17% |
野球 | 2.09% |
バスケットボール | 1.86% |
サッカー(フットボール) | 0.19% |
バレーボール | 0.37% |
水上スキー | 0.20% |
ラケットボール | 0.17% |
テニス | 0.12% |
水泳 | 0.09% |
ボーリング | 0.04% |
スキューバ・ダイビング | 0.04% |
右の表「陸上スポーツやマリンスポーツにおけるケガの発生率」をご覧下さい。
これは米国国家安全委員会事故調査の数字による、他の陸上スポーツやマリンスポーツにおけるケガの発生率のデータです。
この数字によるとスキューバダイビングの事故発生率は他のスポーツ・レジャーなどに比べて決して高い事故率とはいえません。
しかしダイビングに限らず、他のスポーツ・レジャー・アウトドア活動におけるシニア層の人口が拡大するに従い、これら全般的にシニア層の事故が急増しているという現状が見られます。
「加齢」という肉体的変化は避けられぬ宿命で、どんなスポーツにおいても共通のリスクファクターといえます。
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「加齢」によるリスクの予防と準備
「加齢」によるリスクの内、ダイビング特有のものとしては、
1.パニック 2.知識不足
が挙げられます。
パニック予防 |
1.寝不足は絶対だめ! 2.真夏の猛暑や混雑する 週末などは避ける 3.体温低下は早めに防ぐ 4.お久しぶりダイビング だめ!! 出来ればシュノーケリングから 水慣れを! 5.自分の事を良く知っている インストラクターと潜る |
この内1.パニックを防ぐための準備のほとんどは、右の表にあるような事を気をつけていただければ予防できる事だと考えています。
水中でのパニックの防止・対処についてはとにかく自分のことを良く知り、理解してくれているインストラクターと一緒に潜るということに尽きます。
2.知識不足に関しては、自身の体力や健康状態が水圧下でどう変化するのかという事を知っていただきたいと考えています。
又、私達指導員もインストラクターの責務としてこれらの啓蒙が重要であると認識しています。
人生経験豊かなシニアの方々はあらゆる場において若い人達より冷静に物事を判断する能力があります。
しかし、いざトラブルが発生した際には決定的に体力や耐久力に劣るという事実もあります。
40代のダイバーの事故率が高いのは、自分自身の体力の低下をまだ自覚できていない事が要因ではないかと推測しています。
自分の限界を試してみよう、冒険しようとしているわけではないので、基本を理解し、マナーを遵守していれば周囲の意見に惑わされる事もないはずです。
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最近の出来事
ここ数年の出来事と傾向
ここ数年、概ね40歳以上の方々がダイビングを始める、あるいは活動を再開、継続するに当たって、いわゆるダイビング事故死ではない「突然死」(事前に兆候のない突然の持病死)の事例が増加しています。
2007年の特徴的な出来事
2007年は偶然にも10月~12月までの3ヶ月連続で40代の方が亡くなる、又は行方不明のままという悲しい事故が発生しました。
10月には伊豆大島で40代の男性が亡くなりましたが、死因がなかなか特定出来ず、ダイビング事故としては異例の「病理解剖」がなされ、死因が心臓疾患(冠動脈硬化)とされました。
この事で更に複雑なのは、死因がダイビングによる事に起因されず、それ以前の持病によるものとなった場合、現在のスポーツ傷害関連の保険等は全く通用されず、保険金が一銭も払われないという問題もあります。
11月には東伊豆・宇佐美で48歳の女性ダイバーが行方不明。
そして12月にはメキシコで40歳の日本人女性ダイバーがツアーグループからはぐれ行方不明になっています。
表にに見られるように、ダイバー人口のうちまだ多数を占める20代~30代の事故数に対し、40代以上のダイバー事故の確率が圧倒的に高い事が分かります。
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